異端のリターン

Ghetto Heaven Ⅱ を終焉させた大峠雷夢の雑記

《おっとっと①》

 

【はじめに】

 

 

私の名前はジュンコ。

 

 

「動物を苛めるヤツは許さないのだ!」

 

が、口癖の正真正銘の女だ。

 

どこがどう、正真正銘かというと

それはもう、生まれた瞬間から、女なのであるから

疑いようの無い事実なのだ。

 


【1月1日】

 

今日は、12月に人数合わせで参加した合コンで知り合った石田って男と森に行くのだ。

 

石田は言ったのだ

 

「そうだ!君は、1年の初めの日、そう!元日は空いている人かい?」

 

ほぇっ?

 

って、なった。

 

持参した口に咥えていて、唇の水分を吸い取っていた煎餅がパリンと割れて床にクルクル回って落ちた。

 

「いえ、あっし、何の用もございあせん」

 

昨日まで、死んだ魚のような目で見ていた時代劇口調で、そんなことを口走ってしまっていた。

 

石田は、ふむ?と、少し考え込んだ顔をしたが

 

「そうか!じゃー元日、僕と森に行きましょう」

 

「へーい」

 

気のない返事をして、曖昧な口約束をした結果、

 

どうだ!私、ジョンコは、きっちりメイクをして森へ連れて行ってくれる石田くんを待っている。


待ったなし。


相撲中継で御馴染みのそんな台詞が頭の中でささやかれる

 

そんなことを考えていると、石田くんが現れた。


「ごめん!ちょっと、ランチ食べてる間に遅くなっちゃった」

 

「うんうん!全然今きたところだからー」

 

と、私は言わない。

 

今来てないし。うん。

 


「ごめん!ちょっと、ランチ食べてる間に遅くなっちゃった」


「あのさ、相撲の審判みたいな人あれってなんていうんだっけ?」


「えっ。んーと。」


「・・・・」


木村庄之助!」


「あっ!それだ!」


「ジョンコさん、相撲見る人なんだー」


「いや、別に見ないけど、ココまででかかっててさー」


「これで、スッキリしたかい?」


「うん!もうなんか、ピシャッと、出た感じだよ!」


「ふーん」


「で、おせーよ!ばかやろー!!!」


「あっうん。ごめん!」

 

「いしーだー!しっかりしろよーーーー!!!」


「ごめんごめん。よし!気持ちを切り替えて!モリモリ森にいこー」

 

「いえーい!もーり♪もーり♪夢がもりもりー♪」

 

よく、考えてみれば、森に行こう!っていう、企画自体おかしな話だったんだ

 

なんだよ!森に行こうって!


そうだ!森に行こう♪


いや、まて、そうだ!京都に行こう風に言っても、森は森以上にも以下にもならない


やめておけばよかった

 


「ジョンコさん、森は始めてですか?」

 

「んー!元総理をテレビで見たくらいかなぁー」

 

「あぁー確かにあれも森ですねー」

 

「おい!こら!それだけか!ツッコメ!ヒッコメ!いいや、マルコメーーー!!!!」


「えーっと、今から行く森はですねぇー」

 

「おい!なんだよーさっきの下り無視かよー!なんか石田は、ボキャブラリーねぇーなー!」

 

「あははwすいません、なんかw」

 

「ん、んでーなんなのー行く森なんなのー森久美子の家なのー!クマ出てきて森久美子ーってwキャーー!!!」

 

「うん。そーじゃないんだけどー。」

 

「ちっ。もーいいよ!もーいい!早く言え!早く!3秒以内で言え!よーい!ドン!!!!」

 

「あっと・・・えーっと」

 

「ぶー!はい!アウトー!はい!ジャッキー・チェンさんと戦うの刑!!アババババ!!!」

 

「あっ!僕、中学まで空手やってましたよー!」

 

「アチョー!バッ!バッ!見ろ!これが蛇鶴八拳(じゃかくはっけん)だ!アァーーチョーー!!!」

 

「えぇっ!ジョンコさん、なんか拳法使えるんですか!」

 

「あーマジでくそつまんねぇー!そうそう!あたしゃーワイマール憲法の使い手なんですー!」

 

「なんかすいません・・・」

 

「うんうん。で、はい!いいなよ!YOU! 今がチャンスだっちゃわいやー」

 

「えっと、これから行く森はですねぇー!絶対に後ろを振り向いては行けない森なんです。」

 

「それはなに?石田くんなりのポツダム宣言なワケ?」

 

「えっ・・・ポツダム宣言ではないですよ。ちょっとした、ルール宣言ですかね!?」

 

「へいほー!わーった!余裕!余裕のよっちゃんイカ!まじで余裕!バカ余裕!」

 

「後ろ絶対向かないでくださいね!」

 

「わーった!わーった!」

 

「さて、ここが森の入り口になるわけですが、さっきもいった通り、絶対に後ろを振り向かないで下さい」

 

「へいへいーほー!」

 

「じゃ、いきますよ!」

 

「あのさー後ろなんで向けばダメなワケ?」

 

「えっ」

 

クルリッ。

 

 


えぇーまぁー石田やっちまいましたよ。

あっしの質問に対して、後ろ振り返ってしまいまして

石田、見る見る内に「石」になっていきましたでやんす。

あたしゃー思わず、言っちまったでやんすよ。


「石田が石だ!」ってね。

 

幸か不幸か、あたしゃー森から逃げました。

 

といっても、後ろを振り向くなってことだったので

 

ただ只管、前へ前へ!

 

出口という名のゴールがそこにあるのかどうなのか?

 

もうね!パニックだったんだろうね

 

出口に辿り着く頃には、手に持って行ったはずのコアラぬいぐるみ「キヨチン」の

 

姿がどこにもありゃしまへんのやー

 

なんでやー!なんでキヨチンの命まで奪われてしもたんや

 

悪いのは、全部森やー!森が悪いんやー

 


えぇーまぁーそれからさすがに、悲しんで、同じ店で「キヨチン」を買いましたよ。

 

名前は「キヨチン2号β」にしました。


えっ!あっ!その後の石田くんですか?

 

んーと、怖くなったので、合コンの主催者でもあった

 

木の実くん(たぶんあだ名)に連絡を取ったところ

 

「あいつの本当の苗字は、西田や!」

 

って、言われて


あぁーおもしろくない。


「石田が石だ!!!」


じゃなくて


「西田が石だ」

 

だったのかと。


他は、なーんも知りません。

 

むしろ知りたくも無い!

 

反吐が出る。

 

 

f:id:raimu6666:20180219114544j:plain

 

いつか続きを書きたいと思います